葬儀当日――最期のお別れ

葬儀当日。通夜のときよりは、少しだけ落ち着いた気持ちで過ごすことができた。とはいえ、悲しみが薄れたわけではない。ただ、昨日までの混乱と涙の嵐の中で、少しずつ現実を受け止める準備ができていたのかもしれない。

涙が出ないわけではなかった。けれど、昨日のように言葉を発するたびに嗚咽がこみ上げるような感覚とは少し違った。ただ静かに、妻を見送る覚悟を決めようとしていた。

「今日で、全身の姿とはお別れになる」

そう思うと、また胸が締めつけられた。今はまだ彼女の姿がそこにある。顔を見れば、今にも目を開けそうな気がする。手を握れば、温かさが戻ってきそうな気がする。だけど、今日が過ぎれば、もう二度と彼女の姿を目にすることはできなくなる。その現実が重くのしかかった。

娘たちも、そのことを理解していたのだろう。特に長女は、何度も「燃やさないでほしい」と強く願っていた。彼女にとって、たとえ命が失われても、そこにあるのは間違いなく「ママ」だった。冷たくなったとしても、目を開けなくなったとしても、ママはママ。なぜ燃やさなければならないのか、なぜ形を変えなければならないのか――幼いながらに、どうしても受け入れがたかったのだろう。

そんな長女の言葉を聞くたびに、胸が痛んだ。葬儀は故人を見送るための儀式だとわかっていても、子どもにとっては、愛する母を「奪われる」瞬間だったのかもしれない。どう言葉をかければよかったのか、今でもわからない。ただ、娘の手を握り、寄り添うことしかできなかった。

外に出ると、夏の空が広がっていた。カラッと晴れた、雲ひとつない空。強い日差しが照りつける。まるで、すべてを見届けるかのような、まぶしい空だった。

あの空は、今でも忘れられない。どれだけ時間が経っても、あの日の景色だけは、心に焼き付いている。

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