薬剤師主導の脱処方レビュー、超多剤併用高齢者で処方薬0.79剤減少

論文紹介
老年薬学 デイリー論文レポート

薬剤師主導の脱処方レビューで超多剤併用高齢者の処方薬が有意に減少

2026年8月22日(土) ポリファーマシー・脱処方
本日の1報
超多剤併用の高齢者に対する脱処方:プライマリケアにおけるクラスターランダム化比較試験
Deprescribing in older patients with hyperpolypharmacy: a cluster-randomised trial in primary care
著者Baas G, Heringa M, Verdoorn S, ら
雑誌Age and Ageing 2026;55(7):afag209
掲載2026年7月19日(オープンアクセス)
リンク10.1093/ageing/afag209 PMID 42472621
デザインプラグマティック・クラスターランダム化比較試験(地域薬局58施設)
研究サマリー
対象オランダの地域在住高齢者(75歳以上)、多剤包装(MDD)利用かつ慢性薬10剤以上の超多剤併用者、n=318(介入155例・対照163例)
期間2022年10月〜2024年3月に患者を組み入れ、各6か月間追跡
介入/曝露脱処方に特化した訓練を受けた薬剤師による臨床的薬剤レビュー(CMR)。対照群は通常ケア(訓練・ツールキットなし)
手法一般化線形混合モデル(薬局をクラスターとするランダム切片)、intention-to-treat解析
アウトカム主要:6か月時点での減量・中止薬剤数。副次:総薬剤数、健康問題数、QOL(EQ-5D-5L・EQ-VAS)
多剤包装(MDD)とは。複数の薬剤を服用時点ごとに一包化して調剤するシステムで、オランダでは75歳以上の約2割が利用する。服薬アドヒアランス支援に使われる一方、薬歴の見直しが行われにくく、超多剤併用に陥りやすい集団として知られる。日本の一包化調剤患者にも通じる構図といえる。
結果 ① 主要アウトカム:6か月後の脱処方薬剤数

介入群は対照群に比べ、ベースライン薬剤数に対して有意に高い割合の薬剤が減量または中止された(群間差0.79剤、95%信頼区間0.29〜1.28、P=.002)。Per-protocol解析でもほぼ同様の差(0.76剤、P=.008)が確認され、頑健な結果といえる。

結果 ② 効果推定値(95%信頼区間)
群間差 = 0 介入効果(ITT・全体) 0.79 ベースライン薬剤数+1剤ごと 0.23 -0.2 0.1 0.4 0.8 1.1 1.4 脱処方薬剤数の群間差(剤)と95%CI
介入効果(0.79剤、95%CI 0.29〜1.28)に加え、ベースライン薬剤数が1剤多いごとに脱処方薬剤数が平均0.23剤(95%CI 0.17〜0.29)増える用量反応的な関連も示された。総薬剤数自体の群間差は有意でなかった(介入−0.30 vs 対照+0.12、P=.108)。新規処方が両群で同程度発生したためである。
結果 ③ 薬剤レビューでの提案内容と実施率
  • 中止提案実施 205件(提案の40%)のうち120件(59%)が実施
  • 減量提案実施 99件(19%)のうち64件(65%)が実施
  • 薬剤変更(低力価・簡素化)提案実施 50件(10%)のうち26件(52%)が実施

介入群のCMR139件で計515件のDRP(薬物療法関連問題)が同定され、うち過剰治療が34%と最多を占めた。脱処方関連の提案は314件(全提案の61%)、うち189件(60%)が実際に実施され、CMRの71%で少なくとも1件の脱処方が実行された。

結論
  • 脱処方に特化した薬剤師主導CMRは、通常ケアと比較して6か月間で有意に多くの薬剤が減量・中止された(群間差0.79剤、95%CI 0.29〜1.28、P=.002)。
  • 総薬剤数自体には有意な群間差がなく、脱処方は「純減」ではなく新規処方も含めた「処方の適正化」として機能した。
  • 健康問題やQOL(EQ-5D-5L・EQ-VAS)に短期的な悪化は認められず、少なくとも6か月の観察期間では安全に実施可能であることが示唆された。
日本の現場への示唆
  • 一包化調剤患者は脱処方の好対象

    MDD(一包化)利用者は服薬状況を薬局側で正確に追跡でき、脱処方後のモニタリングに適した集団であることが本研究で示された。日本の一包化患者、特に急性期病院退院後にかかりつけ薬局へ引き継がれる患者群は、同様の追跡可能性を活かせる。

  • 薬効群別ファクトシートの整備

    本研究の介入は、薬剤師への1日研修と薬効群別の脱処方ファクトシート(制酸薬・脂質異常症薬など10種)の提供が核だった。薬物療法最適化チームが日本の主要薬効群向けに同様のツールを整備すれば、脱処方の実施率向上に直結しうる。

  • JARSスコアや多剤併用度による対象選定

    ベースライン薬剤数が多いほど脱処方効果が大きいという用量反応関係が示された。JARSスコアが高い、あるいは服用薬剤数が特に多い患者を優先的にレビュー対象とする選定基準として応用できる。

  • 「総薬剤数」だけを成功指標にしない

    本研究では減量・中止が進んでも新規処方の発生により総薬剤数は横ばいだった。脱処方の評価を院内・薬薬連携で行う際は、総数の増減だけでなく減量・変更・新規処方を分けて追跡する必要がある。

  • 短期的な安全性の裏付けとして活用

    QOLや健康問題の悪化がなかったことは、急性期病院での退院時脱処方提案に対する患者・家族・他職種への説明材料として活用できる。

老年薬学 デイリー論文レポート / 2026年8月22日
出典:Age and Ageing(Oxford University Press / British Geriatrics Society), CC BY。数値は原著より引用、要約と考察は本レポートによる。

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