老年薬学 デイリー論文レポート
入院は処方カスケードを正すのか、増やすのか──1万人超レジストリの答え
本日の1報
入院高齢者における処方カスケード:REPOSIレジストリを用いた後ろ向きコホート研究
Restelli A, Crippa C, Nobili A, Mannucci PM, Pasina L; REPOSI Investigators. Prescribing cascades among hospitalized older adults: a retrospective cohort study from the REPOSI registry. Intern Emerg Med. 2026 May 12.
| 著者 | Restelli A, Crippa C, Nobili A, ら(REPOSI Investigators, Istituto Mario Negri, ミラノ) |
|---|---|
| 雑誌 | Internal and Emergency Medicine 2026(オンライン先行公開) |
| 掲載 | 2026年5月12日(購読誌、抄録のみ無料閲覧) |
| リンク | doi:10.1007/s11739-026-04338-6 PMID 42118390 |
| デザイン | 多施設後ろ向きコホート研究(イタリア内科・老年科病棟レジストリ) |
研究サマリー
| 対象 | REPOSIレジストリに登録された65歳以上の内科・老年科病棟入院患者 10,253例 |
|---|---|
| 期間 | 入院時→入院中→退院時→退院3か月後フォローアップ |
| 介入/曝露 | ThinkCascadesフレームワークが定める9種類の代表的処方カスケード(最多はCa拮抗薬+利尿薬) |
| 手法 | 入院時は「未確定」カスケード、入院中/3か月後は「新規導入」カスケードとして時点別に集計する記述疫学的解析 |
| アウトカム | 各時点での処方カスケード保有患者数・件数 |
処方カスケード(prescribing cascade)とは。ある薬剤(索引薬)の副作用が新たな病態と誤認され、それを治療するための別の薬剤(マーカー薬)が追加されてしまう現象。代表例はCa拮抗薬による下腿浮腫が心不全や静脈うっ滞と誤認され、利尿薬が追加されるパターンで、本研究でも最多を占めた。
結果 ① 入院時点、7〜8人に1人が「未確定カスケード」を保有
95%信頼区間は報告されたn数(1,335/10,253)から筆者計算(正規近似)。入院時点で処方歴の前後関係が確認できないため「未確定」と分類されているが、その内訳の65.6%(n=932)をCa拮抗薬+利尿薬の組み合わせが占め、突出して多いパターンだった。
結果 ② 入院というタイミングは「是正の窓」になり得るか
入院中は是正された件数(474件)が新規導入された件数(305件)を上回り、差し引きでは正味169件分の改善だった。ただし退院後3か月間でも31件の新規カスケードが発生しており、入院というイベントが処方カスケードのリスクを完全には遮断しないことが示された。
結果 ③ 主要パターンと頻度の偏り
- Ca拮抗薬→利尿薬(浮腫の誤認) 未確定カスケードの65.6%(n=932/1,335)を占める最多パターン
- 9種類のThinkCascadesパターンのうち4種 3時点いずれでも低頻度または該当例なし。優先順位付けの余地あり
結論
- 内科・老年科病棟入院高齢者の約13%が入院時点で少なくとも1つの「未確定」処方カスケードを保有していた。
- 最多パターンはCa拮抗薬による下腿浮腫を利尿薬で治療してしまう組み合わせで、未確定カスケードの3分の2近くを占めた。
- 入院は是正の機会にもなり得るが(是正474件 vs 新規導入305件)、退院後3か月間でも新規発生は続き、9パターンのうち頻度の高いものへの優先的スクリーニングが実務的との示唆が得られた。
日本の現場への示唆
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入院時トリアージでCa拮抗薬+利尿薬の組み合わせを最優先チェック
本研究で未確定カスケードの65.6%を占めた組み合わせは、日本の急性期病棟でも頻用薬同士の組み合わせであり、持参薬鑑別の段階でスクリーニング項目に組み込む価値が高い。
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JARSスコアへのカスケード項目の統合を検討
「索引薬→マーカー薬」の組み合わせをJARSスコアの評価項目に加えることで、潜在的不適切処方の見落としを減らし、薬物療法最適化チームの介入優先度づけに活用できる。
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退院時サマリーへの「是正記録」の明記
入院中に中止できたカスケードを退院時サマリーに明記し、かかりつけ医・地域薬局への情報連携を徹底することで、退院後の再導入(処方の巻き戻り)を防ぎやすくなる。
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退院後3か月のフォローアップ体制の重要性
入院中の是正だけでは不十分で、外来移行後も新規カスケードは発生し続ける。地域連携薬局と協働した退院後薬剤師フォローアップ(電話・訪問等)の仕組み化が有効と考えられる。
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全カスケードを均等に追うより、頻度の高いパターンに絞った運用を
9パターン中4パターンは低頻度〜皆無だったことから、限られたマンパワーの中では高頻度パターン(Ca拮抗薬+利尿薬等)への重点的スクリーニングが費用対効果に優れる可能性がある。
老年薬学 デイリー論文レポート / 2026年7月21日
出典:Internal and Emergency Medicine(Springer Nature, 購読誌)。数値は原著抄録より引用、95%信頼区間の一部は報告されたn数から筆者が算出。要約と考察は本レポートによる。
出典:Internal and Emergency Medicine(Springer Nature, 購読誌)。数値は原著抄録より引用、95%信頼区間の一部は報告されたn数から筆者が算出。要約と考察は本レポートによる。


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